当院で経口内視鏡
(口からの胃カメラ)
としている理由
ここ数年「経鼻内視鏡はラク」という評判のためこれを行っている医療機関が多くなっています。私も勤務医時代に経鼻内視鏡を500例ほど行ったのですが、その経験では確かに多くの方が「ラクだった」と言って下さいました。しかし「変わりない」という方も予想以上に多く、中には「口からの胃カメラが良い」という方もいらっしゃいました。一方、経鼻内視鏡は内視鏡そのものが細いためにいわゆる「こし」がなく、胃内での操作性に難があると思われます。このため例えば「胃の入り口近く」が観察不十分になったり精密検査(組織をつまむこと)が出来なかったりといった見落としの可能性が高くなると考えています。さらに胃の洗浄・吸引がしにくいのでこれも見落としの原因となり得ます。こういった感覚は恐らく経鼻内視鏡を行ったことのあるほとんどの先生方が多少なりとも感じていることだと思います。
また、これも私の経験ですが経鼻内視鏡を行った方で、10人中1-2人くらいの割合で鼻血を認めます。さらに20人中1くらいの割合で結構な鼻血を認め止血処置が必要となる方もいます。そもそも「鼻」というのは本来空気を通すように神様が造っている臓器であり、そこを人間の都合で「胃カメラを通す」ということにやはり無理があるのだと思います。
以上のような理由から当院では従来よりも細めの経口内視鏡を採用し、鎮静剤を注射することにより苦痛をなるべく抑えた状態で行うようにしています。
院長から一言
*何の症状もなく検診目的で経鼻内視鏡を行うことは良いと思います。しかしその検査で異常(例えば胃潰瘍や胃がんが疑われる病変)を認めた場合は、次回の検査は経口内視鏡とするのが良いと思います。胃のバリウムで異常を指摘されたときや、胃痛や胸やけなどの症状があるときも同じです。
(とは言っても今後、経鼻内視鏡がさらに進化・改良されれば当院でも導入を考えたいと思います)
鎮静剤について
当院での上部・下部内視鏡(胃カメラ・大腸カメラ)は鎮静剤を注射して行うことを原則としています。鎮静剤の注射と一緒に胃や腸の動きを抑えて観察しやすくなる薬剤も使います。これによって苦痛が少なく質の高い(見落としの少ない)検査を行うことが出来ます。使う鎮静剤の量は年齢や既往歴(持病)によって調整しますが、ぐっすり眠ってしまうほどではなく「なんとなくうとうとする」量を目安にしています。それは胃カメラならば呼吸調整が必要で、こちらの声かけに合わせて時に深呼吸をしてもらうことがあるからです。これによって胃の入り口が観察しやすくなります。大腸カメラでは体位変換をすることによって挿入や観察がスムースになることがあるからです。